武満徹 「系図」 ふたたび

2月23日24日と,
2016年の1月に仙台フィルと上演した武満徹さんの「系図ー若い人たちのための音楽詩」を再び尾高忠明さんの指揮で札幌交響楽団と上演しました。
2月の札響定期演奏会 キタラホールでの1演目です。
この作品には谷川俊太郎さんの「はだか」という詩集から武満さんが自ら選んだ六編の詩が入っていて音楽とともにこの詩を聞いて頂くものです。
「詩」の朗読は本当に難しい・・・。私にとってはいつも難題です。
短い言葉の中にたくさんの思いがつまっていて、そしてそれを音楽と一つにしながら伝えていく・・・。いつも音楽とは一緒に朗読をしていますが、オケと一緒だとたくさんの楽器の音とうまく混じり合いながら言葉を伝える作業になります。
オーケストラの皆さんとは何度かご一緒させて頂いていますが、いつもとても緊張!
でも今回はコンサートミストレスの大平まゆみさんとは以前に一度ご一緒させていただいており、また同じくバイオリンの岡部亜希子さんは初めてお目にかかりましたが、お父様の岡部徹さんを存じ上げている関係で以前からはお話は良く聞いておりなんだかとても嬉しい共演となりました。
尾高さんとは仙台フィルに続いて二回目となり、こんな風に同じ作品を二回も上演できることをとても光栄に思っています。
やはり回を重ねると作品もどんどん変化し・・・。これがライブの楽しいところです。
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そしてなんといっても札幌は私の第二のふるさと。
7年間住んでいた町でもあり、二人の娘たちの出生地でもあります。今回は演奏会を聞きに来てくれた幼稚園時代のママたちとも再会し久しぶりに近況報告会もできました。
あっという間の20数年。幼稚園児だったこどもたちはみんな適齢期の男女に成長。
あのときは果てしなく長く続くと思っていた子育てもそろそろ終わりにさしかかり、そんな時にまたみんなに会えて本当に嬉しい札幌でした。
やっぱり、好きです さっぽろ!

# by nakai_otf | 2018-02-28 19:27

あんとあん

28日大隈講堂でも「あんとあん」無事終わりました。
3年間、同じこの世界ハンセン病デーに母校である早稲田大学大隈講堂の舞台に立てたことをとても嬉しく思っています。
3回目にしてラストとなるこの大隈講堂での公演ですが、今年は表題の通り「あんとあん」。映画の「あん」と朗読劇の「あん」を同日に上演するという企画でした。
不思議ですよね。一冊の本が「活字」という枠から飛び出して「映画」になり、そして「朗読劇」になり、それぞれ違った表現で同じメッセージを伝えていく。
私は自分たちの朗読劇が終わってすぐに会場で映画を見ましたが、何度見ても同じメッセージなのに全く違う表現方法で伝える映像にいつも涙してしまいます。この作品はドリアンさんが長い構想期間を経て書き上げたものでしたが、出版社がどこも取り上げてくれなくてポプラ社の野村さんという編集者の方が本にすることを決定するまでは世に出るかどうかもわからない作品でした。
それが「本」という形にとどまることなく、いろいろな物に姿を変えて人々に伝わっていく・・・そのいったんを担えたことを誇りに思いそしてとても感謝しています。

朗読劇「あん」はまだまだ沢山の方に届けなければいけない作品だと思っています。そしてまだまだ進化していく作品とも思っています。これからも大切に読み継いで行きます。
今年も大隈講堂に、最高のお月さまが光りました。

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終演後、外にでると大学の正門も閉まり人の姿も少なくあたりは静まりかえっていました。
ふと空を見上げるときれいな本物のお月さま・・・・。
「おまえに見て欲しかったんだよ・・・だから光っていたんだよ」
さっき声にだして皆さんに伝えた一文が心をよぎりました。

ご来場くださった皆様 ありがとうございました。

# by nakai_otf | 2018-01-30 09:58

森山京さんのこと

新年、10日から活動を開始した私たちですが、この会を結成するきっかけを作ってくださった児童文学家の森山京さんが7日に亡くなられました。11月末にご主人を送られて、つい先日「暖かくなったら大好きな鰻を食べに行こう」とお約束したばかり。まさに突然

のことでした。


私たちのこの「大人と子供のための読みきかせの会」は森山さんのきつねのこシリーズの一冊「つりばしゆらゆら」(あかね書房)に中井が出会ったことから結成されました。

自身の子育ての中で「絵本は子供を寝かしつけるための道具」としか思っていなかった中井にとってまさに目から鱗の思いをもたらしたのが森山さんのこの一冊でした。


つりばしの向こうにまだ見ぬきつねの女の子がいると知った主人公のこんすけは、ゆらゆら揺れる長くて細いつりばしを友達の反対を押し切って一人で渡っていくことを決心します。でもそれは想像以上に怖くて勇気のいることでした。毎日少しずつ歩みを進め、ようやくある日はしの真ん中までたどりついたこんすけ。あと少し頑張れば女の子に会える。いつのまにか読者はこんすけを後押しし、つりばしを一緒に渡っていきます。ところが物語には意外な結末が用意されていました。

半分まで渡ったところで、こんすけは友達に見つかり「あぶないからやめて」と声をかけられます。友達に心配をかけてすまないと思ったこんすけは、「またいつか遊ぼう」という言葉をつりばしの向こうのまだ見ぬ女の子に残し、橋を渡ることをふっつりとやめてしまうのです。

たいていの絵本に用意されているハッピーエンドとは程遠いこの結末に中井は胸を締め付けられました。「頑張ってやってもできないことはたくさんあった。途中で諦めなくてもいけないこともたくさんあった。そんなことを経験し自分は大人になった。おそらくいまこの物語を隣で聞いている自分の幼い子供たちもこんな思いを繰り返し大人になっていくのどろう」と。


不思議な思いがこみ上げ止まらなくなった涙......。

こんな素晴らしい童話がこの世にあるなら是非自分の声でみなさんにそれを伝えたい。子供だけでなく大人の皆さんにも。

こんな思いが「大人と子供のための読みきかせの会」へとつながっていったのです。


我々にご自身の作品の上演を快諾してくださった森山さんはまるで私設応援団のごとく、いつも私たちの活動を支えてくださいました。

公演にかけつけ子供たちの質問に丁寧に答えてくださったり、快くサイン会をひらいてくださったり。そして「今までたくさんのこんすけがいたけど中井さんのこんすけ、私好きですよ」と言ってくださいました。


会が結成されて今年で20年。


まだまだたくさんの時間を共有できると思っていたのに本当に残念でなりません。

森山さんの作品はまさに私たちにいただいた宝物。これからもたくさんの人たちに伝えていきます。

森山さんどうぞ安らかに。そしていつまでも私たちのそばにいて見守ってください。


写真は会を結成してまもなくの頃、雑誌のインタビューで対談をした森山さんと中井。

「恥ずかしいから中井さんのうしろに隠して。」とおっしゃって写した一枚。

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# by nakai_otf | 2018-01-13 08:51

2018

東京は晴天続きの2018幕開け。
早くも三が日が終わろうとしています。
この調子であっという間に2018も過ぎて行きそうで怖いです。
昨年は小津安二郎の映画を聞くシリーズに思いがけず6作品目の「麦秋」が完成し、また12月にはピアニスト石塚まみさんとの大人絵本の朗読会で「ピアノ調律師」も新しい作品として皆様に聞いていただくことができました。
今年は大人と子供のための読みきかせの会が活動の準備を始めて20年目の年になります。
20年!山あり谷ありでしたが、みんなでやってこられたことを嬉しく思っています。
この活動がなかったら「朗読」という分野に足を踏み入れることはなかった、そう思うと一冊の絵本との出会いは私を大きく変えたなぁと、改めて本の持つ力の大きさを感じます。
沢山の方に出会い沢山の作品に出会った20年。20年目からはその出会った作品にまた新しい息吹を吹き込んで行きたいと思っています。
今月末の世界ハンセン病デイに、早稲田大学大隈講堂での「あんとあん」が上演されます。
映画「あん」と朗読劇「あん」。この二つを同日に皆様に大隈講堂で楽しんでいただきます。
尚、三年続けて大隈講堂での上演してきましたが、ここ大隈講堂での上演は今年で最後になります。皆さま是非、二つの「あん」をどうぞお楽しみください。
また2月には札幌交響楽団の定期演奏会にて、武満徹さんの「ファミリーツリー」の中で谷川俊太郎さんの詩を朗読します。
2016年に仙台フィルと一度上演させていただいたこの作品を、再び同じ指揮者の尾高忠明さんと上演できることを大変嬉しく思っています。
というわけで、今年も私なりに、今私にできることをテーマにボチボチと歩んで行こうと思っています。
皆さまにとって2018が幸多き一年となりますように。
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# by nakai_otf | 2018-01-03 13:02
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