なんだか急に涼しくなって拍子抜けですね。
でも私たちって暑ければ暑いと文句をいい、涼しければ早く涼しくなりすぎだと文句をいい
本当に文句の好きな生き物だなと思います。
暑いの大好きな私にとって、8月の最後がこれっていうのは寂しい。
やっぱりもう少し生ビール、く〜って飲みたいですよね。
さてさて今年の夏、私は特別な旅をしました。
というのは新婚時代住んでいたアメリカのニューハンプシャー州に行ってきたのです。
皆さんには「お世話になった」と心から思える人って何人くらいいらっしゃいますか?
今度の旅は私たち夫婦が、心からお世話になったと言える方のお別れ会に参加するための旅でした。その方は稲垣綾さん。
綾さんは研究者であるご主人の和彦さんとアメリカに渡り、50年以上この地で生活をされてきました。
今から26年前、右も左もハノーバーで生活を始めた私に何から何まで教えてくれたのが綾さんでした。
綾さんは筆と墨を使って書や絵をかくブラッシュアーティスト。
私は綾さんの書が大好きで、ハノーバーに住んでいる時に綾さんの書道教室に通い、
そして綾さんの描く絵に一目惚れした
私は私の処女作「ニューイングランド物語」の挿絵を綾さんに描いてもらったのです。
一緒にご飯を食べたりお酒を飲んだり、たった2年弱の滞在でしたが折に触れ一緒の時間を過ごしました。
「いつでも私はここにいるから、みんなでいつでもいらっしゃいよ」
別れる時、綾さんは必ずこう言ってくれました。
いつでも元気いっぱい、そしてエネルギーに満ちあふれていた綾さん。
あそこに行けば綾さんがいる--心のふるさとハノーバーを思い出す時はいつもそう思っていました。
そんな綾さんが、脳卒中で急逝したという報が伝わったのが今年1月の終わり。
誰もが耳を疑う知らせでした。バスルームで倒れてそのままでした。
もともと8月には綾さん傘寿(80才)を祝う展覧会を企画していたのですが、
それがお別れの展覧会に変わってしまいました。
板垣家の子供たちはみんな私と同年代。
「是非来てください」というメールをもらいこの旅を決心しました。
展覧会の会場へ行くとそこには綾さん渾身の作品がたくさんならんでいました。
大好きだった綾さんの書や絵をみただけでもう涙がとまらなくなりました。
「鳥」
展覧会の翌日はレイクモーレイ(バーモント州)のほとりにあるご自宅で、
ご主人と子供たちによる手作りのお別れ会が開かれました。
その様子は次号で。
私のこころのふるさとには27年前と変わらない時間が流れていました・・・・・。